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統計的仮説

自然科学において仮説を検証することは研究者の作業であり、仮説が正しいと主張できることこそが目的でもある。心理学では、まさに仮説を検証するためにデータをとり、正しいと主張するためにデータ解析を行う。つまり、統計学を道具として扱うということである、しかし、一般にいう仮説と、統計学でいう仮説とは少し違うことを知っておかなければない.

一般にいう仮説とは「xxxであるに違いない」「xxxであるということが正しい」「xxxであるべきだ」といったようなものになる。つまり、最終的にその仮説が採択される(仮説が正しいとされる)ことが望ましいというような仮説を立てることになる。

一般にいう仮説の例

  • 男性と女性の身長の平均値は異なる
  • 高校生は中学生より握力の平均値が高い

ところが統計学では、奇妙に思われるかもしれないが、最終的にその仮説が棄却される(仮説が誤りであるとされる)ことを前提とした仮説を立てるようにする、言い換えると、これは反証可能な仮説を立てるということである。

統計学でいう仮説の例

  • 男性と女性の身長の平均値は等しい
  • 高校生と中学生の握力の平均値は等しい

このような反証可能な仮説のことを統計学では帰無仮説という。 また、これに対する仮説として対立仮説を立てる。 例えば、すでにあげた2つの問題 (1)「男性と女性の身長の平均値は異なるか」 (2)「高校生と中学生の握力の平均値は異なるか」について考えてみる。

問題(1)の帰無仮説と対立仮説

問題(1)については次のように帰無仮説と対立仮説を立てることになる。

帰無仮説 : 男性と女性の平均値は等しい

対立仮説 : 男性と女性の平均値は等しくない(異なる)

問題(2)の帰無仮説と対立仮説

一方で問題(2)については、もう少し複雑な対立仮説を考えることになる。 元々、主張したい仮説(一般でいう仮説)は「高校生は中学生より握力の平均値が高い」というものだから、「等しくない」という対立仮説は保守的な主張だろう。したがって、より強い主張として「より大きい」あるいは(場合によっては)「より小さい」といった、方向性のある対立仮説を立てることになる。先の話になるが、前者のような保守的な仮説を検定することを両側検定、後者のような方向性のある仮説を検定することを片側検定という。また、このように仮説を検定することを統計的仮説検定という、なお、心理学においてはほとんどの場合において両側検定(保守的な主張)が行われる。

帰無仮説: 高校生と中学生の平均値は等しい

対立仮説:

  1. 高校生と中学生の平均値は等しくない(異なる)
  2. 高校生の平均値は中学生の平均値より大きい
  3. 高校生の平均値は中学生の平均値より小さい